開館30周年記念 ザ・ベスト・セレクション

2018-10-06〜2018-11-25
名古屋市美術館

出品作品: 荒川修作 《35フィート×7フィート6インチ、126ポンドNo.2》 1967-68年

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ディープでマニアックなコレクションの世界へようこそ

名古屋市美術館は今年の4月に開館30周年を迎えました。美術品の収集は、開館に向けて準備を進めていた1983年に始まり、現在その総数は6,278点に達しています。この約35年間の収集活動を振り返ると、いくつかの興味深いエピソードに行き当たります。開館に向けて準備を進めていた1985年、東京と愛知で開催されていた「モディリアーニ展」には、海外から《おさげ髪の少女》が出品されていました。同年11月に、この作品が入手できるかもしれないという情報を得て交渉を進め、1986年の年末に、開館を控える当館の目玉として購入しました。また、現在渋谷駅に設置されている、岡本太郎の壁画《明日の神話》の下絵がメキシコに残されているとの知らせを受けたのは1999年。この下絵は現地での調査、応急処置を経て日本に輸送され、2000年8月に関係者のご厚意により当館に寄贈されました。

ほとんどの美術館が作品の収集方針を定めていますが、当館の方針はすべて、地元ゆかりの作家と結びついています。稲沢出身でパリの風景を50年以上描き続けた荻須高徳。青年期をメキシコで過ごし、戦中、戦後は瀬戸を拠点に活動した北川民次。刈谷出身の河原温、名古屋出身の荒川修作、桑山忠明はニューヨークに渡り、現代美術の分野で世界的な評価を得ました。近年は『老人力』や『超芸術トマソン』の著者としても知られる、名古屋ゆかりの現代美術家、赤瀬川原平の評価も高まっています。こうした作家たちの活躍にちなんで、当館は「エコール・ド・パリ」、「メキシコ・ルネサンス」、「現代の美術」という3つの領域と、「郷土の美術」に焦点を絞って収集を続けています。とりわけ当館の個性を決定づけているのが「メキシコ・ルネサンス」で、メキシコの近代美術を532点も収蔵している美術館は国内にありません。人間の生と死、愛をテーマに神秘的な絵画を描き続けたメキシコの女性画家、フリーダ・カーロの作品は、日本の美術館の中では唯一当館だけが所蔵しています。

開館30周年を契機に、個性の強い当館のコレクションの魅力をあらためて多くの皆様に知っていただきたく、当館を代表する名作や知られざる傑作を一堂に展示します。また、収集や保存にまつわる学芸員の調査研究や、作家や作品にまつわる資料などもあわせて紹介します。本展覧会を通じて、当館のコレクションへの愛着を深めていただければ幸いです。

(美術館ホームページより)