「書かれた詩の運命も、絶海の孤島に漂着した人が海に投げた瓶詰のメッセージのようなものであるかも知れない。[…]この断章は[…]ようやく岸辺にたどり着いた漂流詩というところであろうか。とはいえ拾われたとしても、その運命については何もわからないのである。」
瀧口修造「地の稲妻」1972年、『コレクション瀧口修造5』、みすず書房、1994年所収
このたびの展示は、瀧口修造の資料を分有する当館と慶應義塾大学アート・センター(以下KUAC)による共同企画展の第2回目として開催するものです。
富山県出身で、詩人、美術評論家、造形作家など多彩な活動を繰り広げた瀧口修造(1903-1979)は、様々な人物から多くの作品や物品を贈られていますが、手紙もその一つです。現在残っているその数は、KUAC所管分だけでも約3,500件と膨大です。手紙はそれがどんな様相を呈していても、離れた場所にいる誰かに様々な想いを馳せて書かれるものです。それは、瀧口の語る「漂流詩」とよく似ています。
現在、KUAC、荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所、Reversible Destiny Foundationは、瀧口と荒川+ギンズの書簡整理を共同で進めていますが、本展はその整理を背景に企画されました。
このたびは、荒川修作/マドリン・ギンズから届いた手紙や同封物に関連した作品や資料に注目し、1974年に出版社エディシオン・エパーヴが制作した《漂流物標本函》のために寄せられた荒川+ギンズによる古絵葉書30枚を初めて全点公開するとともに、瀧口宛に送られた絵葉書など関連作品や資料、関連作家の作品をあわせてご紹介します。
これらをオブジェとして見るだけでなく、手紙の関連物として見たときに現れる別の表現について考えたいと思います。
主催 | 富山県美術館、慶應義塾大学アート・センター
協力 | 荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所、Reversible Destiny Foundation