コロナ禍に見舞われた人類は、多くの苦しみ、痛み、不自由を受け入れ、それに耐え、この2021年の終盤に、ようやく失われたものを取り戻すために動き始めたと言えるでしょう。しかし多くの人々は語ります、もう以前と同じ世界には戻らない、新しい生活様式や価値が求められるのだと。現代美術家荒川修作と詩人マドリン・ギンズは、1990年代から、新しい「環境」を提案し、そこで活動する身体の感覚の変化を引き起こすこと、その新しい身体感覚に依拠して、既存の価値観を疑い、本当に生きやすい社会を感じとる人間を生み出すこと、これらを自分たちの活動の目標に掲げました。ポストコロナの時代のあり方を模索するためにも、荒川+ギンズの芸術活動と思想を手がかりにすることには、大きな可能性があると考えられます。
われわれがいかなる存在であり、何に向かっているのか──「自らにとってのパズル・クリーチャーであるわれわれとは、不可解さの訪れなのである」。荒川+ギンズは、こうした問いを様々なかたちで、そして徹底的に深く問いつづけ、次なる世紀の(暫定的ながら)具体的なプランを提示しました。ARAKAWAは、いつも「今すぐやれ!」とわれわれを奮い立たせていたことを思い出しましょう。22世紀はもうすぐであり、今すぐなのです。
このような精神にのっとって、国際カンファレンスAGxKANSAI 2022: Art and Philosophy in the 22nd Century After ARAKAWA+GINSは関西大学東西学術研究所身体論研究班と京都芸術大学により共同開催されます。
関西大学東西学術研究所身体論研究班は、2016年より荒川+ギンズの思想を学際的に研究するプロジェクトを推進してきました。これまでに開催された荒川+ギンズ国際カンファレンス(AG1、パリ第10大学、2005/AG2、ペンシルバニア大学・スロート財団、2008/AG3オンライン、コロンビア大学・グッゲンハイム美術館、2010)で探求された問題やテーマをさらに発展させ、AGxKANSAI 2022は、講演、対談、プレゼンテーション、展示、パフォーマンスを通して、22世紀に向けての/22世紀の芸術と哲学のあり方を探ります。「After ARAKAWA+GINS」は、A+Gの早すぎた逝去のあと(after)もなお、彼らの未来思考のヴィジョンを追いかけ(after)つづける私たちの意志の表明です。