『世界の終わりと環境世界』展

2022-05-13〜2022-07-03
GYRE GALLERY

出品作品: 《Why Not (A Serenade of Eschatological Ecology)》1969

核の脅威と地政学的緊張、環境破壊と地球温暖化──〈世界の終わり〉は、いまや宗教的預言でも科学的予測でもなく、今ここにあり身体的に知覚され経験されるカテゴリーである。〈世界の終わり〉まで生き延びるためではなく、〈世界の終わり〉とともに生きるために、政治的なもの、社会的なもの、人間的なものの交差する地点にあらわれる破局的主題と対峙し、近代の諸概念を根源的に問い直す展覧会となる。

〈世界の終わり〉は、「人間中心主義」の終焉とも言える。すべての動物はそれぞれに種特有の知覚世界をもって生きており、その主体として行動しているという考えである。ヤーコブ・フォン・ユクスキュル(註)によれば、普遍的な時間や空間(Umgebung、「環境」)も、動物主体にとってはそれぞれ独自の時間・空間として知覚されている。動物の行動は各動物で異なる知覚と作用の結果であり、それぞれに動物に特有の意味をもってなされる。ユクスキュルは、動物主体と客体との意味を持った相互関係を自然の「生命計画」と名づけて、これらの研究の深化を呼びかけた。

本展覧会では、「人間中心主義」からの離脱し我々がすべて異なる「環境世界」に生きていることへの認識に到達できるのかを問い掛けていくものである。

(註)ヤーコプ・フォン・ユクスキュル(1864〜1944)は、ドイツの生物学者である。生物学の概念として環世界(かんせかい、Umwelt)(=環境世界)を提唱した。環境世界とも訳される。生物学的主体によって構築された独自の世界のことを「環世界:かんせかい=Umwelt:ウンベルト」と名付けた。客観的な環境ではなく、主体が知覚でき、働きかけることができる環境(環世界)こそ、主体にとっての現実、生きる舞台なのである。

本展企画者 飯田高誉(スクールデレック芸術社会学研究所所長)