春から初夏にかけて天候が日々変わる最近のニューヨークはチェルシー街の西19丁目のデイヴィッド・ツヴィルナーギャラリーにて、メール・アートでよく知られるアーティスト、レイ・ジョンソンの展覧会—Ray Johnson: WHAT A DUMP—が今月22日まで開催されています。ジャレット・アーネストのキュレーションによるこの個展は、レイ・ジョンソンエステート所有のコラージュ作品やアーカイブ資料をふんだんに紹介するおすすめの展示です。そこで今回の『Distraction Series』 19号では、荒川とマドリン・ギンズのレイ・ジョンソンとの親交をReversible Destiny Foundationのアーカイブからの資料、さらにはこの展覧会で展示中の作品イメージもあわせて、双方向から振り返ります。
長く親しい関係にあったこの3人の交流の記録は、個人的な内容のメッセージのやりとりのほかにも、やはりジョンソンならではのメール・アート、コラージュ、その他諸々の資料としてジョンソンエステートのアーカイブのみならず、Reversible Destiny Foundationのアーカイブの中にも大変興味深いアイテムとして大切に保管されています。印象的なうさぎのようなキャラクター、コミック・ストリップ、塗り絵本のページ、メール・アートに関するスタンプ、ジョンソンのコラージュの手法を解説するスタンプが繰り返し押されたノートのページ等々、荒川とマドリンのもとにはたくさんの不思議なメールがジョンソンのニューヨーク通信学校(New York Correspondence School; 時にCorrespondance Schoolとも呼ばれる)から郵送されてきました。特にユニークなアイテムとしては、マドリン宛に送られてきたフィンランドのある雑誌の1ページのコピー。そこに掲載されているのはレイ・ジョンソンからのレターですが、タイプライターで記されたこの手紙は雑誌上で鏡文字として左右反転して印刷されており、これを取り囲むフィンランド語と競うかのように読みづらくなっています。
アーティスト達のアーカイブに保存された郵便物という一昔前のメディアを通して振り返る一昔前の、でも生き生きとしてユニークな交流関係を、皆様も楽しんでいただけたなら光栄です。
Yours in the reversible destiny mode,
Reversible Destiny Foundation and ARAKAWA+GINS Tokyo Office