Distraction Series 17:「男性除け」香水プロジェクト

みなさまへ、

数ヶ月前、リバーシブル・デスティニー財団のアーキビストのキャサリン・デネットがアーカイブ資料整理中に「男性除けアーカイブ」(Man Repellent Archive)と表記されたフォルダーを発見しました。キャサリンはまず「とても好奇心をそそる資料。中身はステッカーの数々と香水製造会社からの請求書。この不思議な香水ってなんだろう? マドリンはなぜ<逆説的に効果を発する男性除け>の香水の開発を試みていたのだろう?だいたい<逆説的に効果>があるって、どういうこと?」と思ったそうです。

本日お届けする『Distraction Series』第17号は、マドリン・ギンズが2011年頃に試みていたこの「男性除け」香水プロジェクトの開発プロセスを垣間見ることのできるイメージを、RDFアーカイブスから数点ご紹介するとともに、当時荒川ギンズのスタジオ・アシスタントで、この香水プロジェクトでマドリンと近しくコラボレーションしていたアーティスト、アヴィヴァ・シルバーマンさんに、RDFスタッフがインタビューした模様を編集した動画をご覧いただこうと思います。

「男性除け香水」は、「女性除け」や「赤ちゃん除け」など色々な種類のある香水シリーズのうちの一つで、それを身に付けると除けるはずなのに逆に惹きつける効果のある香りを目指すものでした。そしてこれはシリーズ中唯一実際にデザイン案まで検討されました。期間にして4〜5ヶ月の間、アンティークのカメオ風から始まり、最終的には様々な球技で使用されるボールをコラージュしたロゴ・デザインの試行錯誤があったプロダクト案でした。

このプロダクトは完成後に美術館のショップなどで販売を展開することを目的としていましたが、製造には至りませんでした。とはいえ、荒川が去った後に始められたこの香水デザインのプロセスを振り返ると、コラボレーション、そして思考実験としての反復を大切にしたマドリンの創造的手法がよくわかります。というのも、このプロダクト案はマドリンがスタジオ・スタッフと頻繁に行っていたグループでの会話が生み出したもので、マドリンが解決策を模索していた多くの課題の内の一つだからです。例えば課題の一つとして、フィンランドの日光の欠如をどう解消するか、などもありました。

みなさまがこの香水プロジェクトのイメージを見るうちに、こうした不思議な思考実験に魅了されることを願っています。

Yours in the reversible destiny mode,

Reversible Destiny Foundation and ARAKAWA+GINS Tokyo Office

「男性除け香水」の為のステッカー案、デジタル・スケッチ、2011年
「男性除け香水」の為のステッカー案、デジタル・スケッチ、2011年
「男性除け香水」のロゴ初期案、デジタル・スケッチ、2011年
「男性除け香水」のロゴ初期案、デジタル・スケッチ、2011年
「男性除け香水」のデザイン案とメモ、デジタル・スケッチ、2011年
「男性除け香水」のデザイン案とメモ、スケッチ、2011年
「男性除け香水」のポスター、2011年