富士ゼロックス版画コレクション×横浜美術館 複製技術と美術家たち -ピカソからウォーホルまで

2016-04-23〜2016-06-05
横浜美術館

出品作品: 《FALLING INFLECTIONS》1978
《Work》1958-59
《SPLITTING OF MEANING》1970-71

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この展覧会は、写真印刷や映像などの「複製技術」が高度に発達・普及し、誰もが複製を通して美術を楽しむことができる時代に、ピカソをはじめ20世紀の欧米を中心とする美術家たちが、どのような芸術のビジョンをもって作品をつくっていったのかを、富士ゼロックス版画コレクションと横浜美術館の所蔵品によって検証するものです。

ドイツの哲学者ヴァルター・ベンヤミン(1892-1940)は、写真発明以降「複製技術」の発展・普及によって、人々の感じ方や芸術作品の受け止め方、芸術への期待が大きく変化し、絵画や演劇などの伝統的な芸術作品にとって危機的状況が生まれたと指摘しています。
実際、20世紀には古典的な美術のイメージを払拭するさまざまな潮流が登場しました。キュビスムやフォーヴィスムなどの空間と色彩の新しい表現に始まり、第一次大戦後は伝統的な美の概念を覆すダダ(反芸術)や、普遍的な様式を確立して理想の社会を目指すバウハウスやロシア構成主義、無意識の探求によって人間を解放しようとするシュルレアリスム、第二次大戦後には大量消費社会を反映したポップアートが現れ、1960年代にはゼログラフィー(電子写真・複写技術)が美術作品に導入されました。
こうした20世紀の美術史を「複製技術」という時代背景から見直すことで、芸術作品の危機に対する美術家たちの挑戦として読み解くことが本展のねらいです。

富士ゼロックス版画コレクションは1988年以来、「版画もしくはそれに類する手段で複数制作されたもので、その時代の精神や文化のドキュメントたるべき作品」を指針として、欧米と日本の重要な作家による版画、写真、コピーアート、アーティストブックなど、現在約950点を擁し、2010年に横浜のみなとみらい地区に新築された研究開発拠点ビル内の「富士ゼロックス・アートスペース」で定期的な展示を行っています。

横浜美術館は開館前の1982年以来、横浜開港以後の日本と西洋の近現代美術を収集し、西洋美術ではシュルレアリスムを中心に、ダダ、構成主義の絵画、彫刻、版画を所蔵する他、ダゲレオタイプ、ナダールの肖像写真、アジェの風景写真などにはじまる写真史を跡づけるコレクションを擁しています。

地元企業である富士ゼロックスと横浜美術館のコレクションの共演となる本展は、双方に共通する代表的な美術家の作品を中心に、版画、写真、書籍など複製技術を用いた多様な作品と、油彩画や彫刻など伝統的なメディアによる作品を合わせた約300点によって構成され、複製テクノロジーが浸透する現代の先駆けとなった時代の美術家像を浮き彫りにします。(美術館ホームページより)