Distraction Series 8: 「荒川修作の”MISTAKE”」講師:山田諭(2020年7月13日更新)

『Distraction Series』第8号は、京都市美術館学芸課主任の山田諭氏のご厚意により、2012年5月13日、当時氏が学芸員として勤務されていた名古屋市美術館(NCAM)にて行った「荒川修作の“MISTAKE”」と題された2時間に渡る講義の10分40秒ダイジェスト版をお届けいたします。この講義はNCAM所蔵の大作《35フィートX7フィート6インチ、126ポンドNo. 2》に焦点を当て、深く荒川作品の解析を試みるものです。作家の故郷名古屋の美術館としてNCAMは、荒川が1950年代後半制作したいわゆる《棺桶シリーズ》、彼の思考過程を垣間見ることのできるスケッチ、さらには、後にマドリン・ギンズと共同で建築へと移行する前触れを感じさせる1980年代の大型の絵画作品までと、荒川作品発展の軌跡を時代ごとの代表作によって辿れるように全16点にのぼるコレクションを形成してきました。現在さらにマドリン・ギンズ・エステートから5点の作品が寄託されています。

山田氏は他2名の学芸員と共に2003年から2年間に渡りNCAM所蔵の荒川作品を対象とした研究会を続け、その成果を2005年「荒川修作を解読する」展として開催、カタログも「解読書」として出版されました。その後も深く荒川作品と関わってきた経験が、山田氏において、荒川は全ての物事を深く詳細に思考し検討した上で、可能なかぎり明快にその考えが観衆に伝わる様に作品制作をしている、という確信へと導きます。これは荒川作品がとても難解なものであるという印象を持つ多くの人々にとっては驚きをもって迎えられる斬新な見解と言えるでしょう。

この山田学芸員の講義が皆様を荒川の世界へと誘い、それぞれの視点から作品を解析するという思考の訓練へとつながることを願っています。YouTubeビデオの右下のCCを選ぶと日本語字幕もご利用いただけます。

Yours in the reversible destiny mode,

Reversible Destiny Foundation and ARAKAWA+GINS Tokyo Office

荒川修作《35フィート×7フィート6インチ、126ポンド No.2》1967-68年 名古屋美術館 蔵
Arakawa, 35’ by 7’ 6” and 126 lbs. No. 2, 1967-68, acrylic and collage on canvas, 7 panels, overall: 420 x 88 1/2 inches
Collection of Nagoya City Art Museum, photograph courtesy of the museum
Arakawa, Look at It, 1968, screenprint (5 screens) on chromium-plated Mylar, 36 x 48 inches
荒川修作《風景 / Landscape》1970年 北九州市立美術館 蔵