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2007年07月10日【インタビュー】さとうみちよさん(Gazaa主宰) |

【さとうみちよさん】
今回は、7月26日より三鷹天命反転住宅にて行われる、『morphing「家と体の間の、服」』展に先立って、「Gazaa(ギャザア)」を主宰されているさとうみちよさんに、展示への経緯や考えなどいろいろお伺いしてみました。
◆天命反転住宅と出会って
ABRF 本日は展示についてのお話をお聞きできればと思います。どうぞよろしくお願いします。
さとうみちよ よろしくお願いします。
ABRF そもそも三鷹天命反転住宅で展示しようと思ったきっかけはなんですか?
さとうみちよ 今回、三鷹天命反転住宅での展示にあたっては、荒川修作さんマドリン・ギンズさんの天命反転コンセプトをもっと身近に感じてもらう服を作ろうと最初に考えたことがきっかけです。
竣工間もなく、三鷹天命反転住宅を体験させていただいく機会がありました。その時、一緒に内覧会に参加している皆さんの体の動き、顔の表情などが見る見るうちに変わっていく姿を目の当たりにしたんです。以前より荒川さんがインタビューなどで「外界が変われば体が変わり、体が変われば意識が変わる。外からの刺激で知らない間に自分が変わっている。」ということをおっしゃっていたのですが、環境の変化がこんなにも体を変えていくのだということを住宅の中で強く感じたことは、作品を作ることを仕事にしている私にとってもとても衝撃的なことでした。そして、私は洋服も住宅も環境を創るという面においては非常に近いものだと考えています。そういう考え方において、今までGazaaで自分なりにコンセプトを持って服を作ってきたことが、この住宅によってある意味間違っていなかったと思う部分と、ここまで環境によって体を変えることができるのならば、もっと洋服にも可能性があるのではないかと思いました。
そこからは、あの空間で感じた環境をどうやったら服で表現することが可能なのだろうかという考えが浮かんできました。それを表現することによって新しい服の可能性を提示することができるのではないか、もっと服には可能性があるのではないかと思い、いろいろ試行錯誤してきて今に至っています。
◆Morphing(モーフィング)とは
ABRF 試行錯誤とおっしゃっていますか、よろしければ具体的にお話をお聞かせください。
さとうみちよ それを説明するには、今回の展示のタイトルにもなっている「Morphing(モーフィング)」についてご説明するのがいいと思います。
「Morphing(モーフィング)」というのは映像の編集技法の名前で、ある形を徐々に変化させて別の形にする技法のことをいいます。モーフィングを使っている映像の中で有名なものにマイケル・ジャクソンの「Black and White」のビデオクリップがありますがご存知ですか。曲の最後で顔がどんどん変わって行く場面がありますが、あれがMorphingです。
なぜこの題名を付けたのかというと、私は服というのは着る人と空間をつなぐMophingのようなものではないかと考えているからです。
普段私がダンスの衣装などを作る時は、着る人が、それをどのような空間で着るのか、どのように動くのか、どのような相手に向かって着るのかということを考えながら、服を作っています。ダンスというのは常に新しい価値観・表現方法を生み出す作業なので、言葉などでは表現しきれない一種混沌としたところから、ダンサー、照明、音響などの共通した選択肢を見つけ、ダンサーとお客さんの間をMorphingして作品として切り取る作業が衣装の持つ役割なのではと考えています。
一方、三鷹天命反転住宅で服を作ろうとした場合は、三鷹天命反転住宅と使う人の間を切り取りをするということになります。方法論としてはあまり変わりはないように見えますが、空間から着想していうというのは今まで行ってきた作業とは大きな違いです。そして、この住宅はいろいろなコンセプトが複雑に絡み合って一つの形になっているの、どこをクローズアップするのかというところによって、できてくる形がまったく異ってしまいます。それには最初大変悩みました。まさにどこを「Morphing(モーフィング)」するのかということですね。
◆人と建築の間

【打ち合わせ風景】
さとうみちよ ただし、三鷹天命反転住宅には「住宅は人間の延長である」という考え方が根本にあるので、考えはじめると今まで見えてこなかった空間と人の間にあたらな動きが見えてきて、大変楽しい作業になりました。結果的には、そのひとつひとつをうまく抽出するために、部屋ごとに別々のテーマを作ってそれぞれ作品にしていくという方法をとるつもりです。
ABRF 展示期間中に4人のダンサーの方々のパフォーマンスが予定されていますね。
さとうみちよ ええ。やはり私たちが作るものはあくまで服なので、それを着てもらわないと完成しません。ただ、三鷹天命反転住宅があったからこそ生まれてきた服なので、普通のファッションショーではなく、私が普段から一緒に物を作っているダンサーの皆さんに来てもらって、踊ってもらうことにしました。
ダンサーの皆さんとは今まさに打ち合わせをしている最中なのですが、とても面白いものになりそうです(笑)。荒川さんの発言の中で「自分たちは住宅の50%しか作ることはできない。あと50%は使ってくれた人が作るものだ」とおっしゃっているので、ダンサーの皆さんには空間と服から感じたイメージを自由に表現してもらい、客さんと一緒に三鷹天命反転住宅の残りの50%を完成させることができればと思っています。
ABRF それでは、最後にこれを読んでくださっている皆様にひとことお願いします。
さとうみちよ 普段から私たちは、着る人だけでなく、それをどのような空間で着るのか、どのような相手に向かって着るのかということを考えながら、服を作っています。今回の展示で三鷹天命反転住宅と身体の間をMorphingすることができれば、皆さんにこの住宅の新しい可能性そして「新たな服の可能性」を感じていただける展示になるのではと思っています。
展示と併せて、皆様にも着ていただけるようにとT-shirtsなども用意いたしました。いらして下さった方々にピッタリのものを一点一点受注してから製作する予定になっています。
皆様には実際に展示をご覧いただいて、なぜ「天命反転」なのかをご自分の体で感じていただければと思いますので、この機会にぜひお越しください。
さとうみちよさんが主宰するGazaaの展示は7月26日より三鷹天命反転住宅にて行われます。ダンスパフォーマンスについては事前申し込み(定員制)ですので、詳しくは下記ホームページをご覧ください。
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2006年01月27日【現場インタビュー】第三回 三菱商事建材株式会社 塩地博文さん A |

【三菱商事建材 塩地さん】
前回に引き続き、三菱商事建材株式会社モイス事業部の塩地博文さんにお話を伺います。
◆今こそ「文明都市」が必要
塩地 僕が今回一番言いたいのは、荒川さんの持っている、なんていうかな、現在の街や生活や世界に対する一定のリズムをもったフラストレーションみたいなものが、共有できるんです。で、そういったフラストレーションって、大小は別にして、実は多くの現代人が持っているんだよね。それが共鳴して共振すると、もう一回リメイクしましょうっていう衝動になるんだと思います。
ABRF その究極形態が例えば戦争ですよね。
塩地 ですね。その戦争を起こしたくないと思わせるには、やはり残したい物とか、壊したくない物がなければダメなんだよね。戦争って最大の破壊行為じゃない。だから壊したくない最大規模のものっていえば文明都市になるんだよね。荒川さんのフラストレーションの打開策というのはそういう方向にあると思う。
僕もその唯一の手段は建築だと思うよ。建築以外にないんですよ。そもそもそうだったんです。科学技術の広がりとか叡智の結晶を示す物は、大昔から土木工学を含めた建築なんですね。その際たる物はピラミッドです。構造力学、材料工学の粋を集めた技術の結晶です。
例えばこういうことなんですよ。エジプトのピラミッドでは、同じ石材を使うにも、構造を支える石は、切りやすかったり運びやすいもの、だけど遺体を安置する間は「御影石」という固くて重い石で出来ていて、使い分けられています。なぜ御影石なのかというと、ミイラ化するように、御影石から発生するマイナスイオンが活用されているなんて説があるんです。そういった当時の多くの技術、アイデア、知識が全てピラミッドに集約されているんですね。全ての材料を知悉して、何百年や何千年にも渡って自分たちの文化とか権威とか知性とかそういったものを全て見せてきたわけですよ。それがあるときからショーウインドの向こう側にいってしまって、それが経済行為としての芸術になってきたということを、どう打開するかといったら建築が一番分かりやすいんですよ。
◆建築における「時制」

【エコビルド展にて】
塩地 三鷹の住宅についても、なぜ色があんな色なのとか、丸なのとかあるけど、そんな問題じゃないんだと思う。結局、人が芸術や建築をなぜに希求するかっていう意味を、もう一度考え直さないと、荒川さんのやろうとしていることは分からないんだよね。ここら辺の解説が一番抜けていると思う。そこの解説が抜けてしまうと、ただ、「荒川さんのデザインって面白いねー」てだけで終わっちゃう。自己満足ですね。それはね、建築でやってはいけないんです。建築は住む人もいるし、いつか解体もするわけだから、変なもの作ったらまた地球へのご迷惑になるし。そしてその迷惑が時間を持つんですよ。こういう言い方のほうが分かりやすいかな。迷惑に「時制」が生まれるのが建築なんですよ。現在の責任だけじゃなく、未来や過去にも責任を果たさなくてはならない。今まであった基礎技術を結集して、過去の英知も十分に理解した上で、何十年も何百年も何千年にも未来に渡る造形物をつくるわけだから。でも今の建築は時制を無くしてしまったのかもしれない。だから作った瞬間にそれは消耗品であり、潜在的な廃棄物なんですよ。いつも壊すばっかりでしょ。全部ゴミになっちゃう。なんて馬鹿な事をやっているのかってね。(笑)もし荒川さんが自己満足でやろうとしているのなら、建築の世界に来ないでくれという人は結構いると思うんですよ。
でも僕が思うのは、やっぱり荒川さんの作りたいものは、単純にその時消費されるだけの建築ではなく、時を刻む文明としての建築だとおもうんですよね。時間を渡っていく建築ですね。
ABRF もともとピラミッドが持っていたような、文化、文明につながる建築にしたいということですか?
塩地 絶対そうだと思う。そういう文明に対して、リアルにつながる技術や部材を提供する事が今回のプロジェクトだったんだと思います。そういった意味では我々の目指す方向とやはり一致したんだと思う。
◆人が好き、地球が好き。もうそれしかない。
塩地 あの、なぜ荒川さんがこんな事を始めているのか、っていうことがあると思いますが、僕が思うのは、荒川さんは人が好きなんです。つまるところ、これに尽きるんですよ、彼は。でね、人が好きになったら、どうしたって地球が好きになっちゃう。こんな話、子どもっぽいかな(笑)。
でもね、人が好きで地球が好きって事以外に、人が立つ原点はもうないよね。環境を究極的に破壊していって、食糧危機にエネルギー枯渇、これからずっと内向きの時代が続くわけです。そういった中で荒川さんのようにシンボリックに何かを打ち立てて、人や地球が好きになるようにみんなを喚起していかないと、この過密地帯の中で平和に生きる方法って実はないんじゃないかと思うんです。
例えば昔ながらの古民家ってありますけど、茅葺屋根とかああいった建物は地球が好きじゃなきゃ建てられないんですよ。身近にある石だとか葦だとか藁だとか木だとか、観察したり触ったりしながら、材料を理解していくその膨大な作業に支えられているんです。木だって、切り取った後、どんな場所に置いたら乾燥が進んでいって、いつ頃から建築材料として利用できるのか、なんて事、一世一代じゃ無理ですよね。好きじゃなきゃ使えないんですよ。そういった思いが綿々とそして広大な知恵の塊となって家になるんですよ。材料工学なんて大げさに言わなくていいんです。知恵ですよね。そういう知恵が積層していくんです。
だから荒川さんの建物で言えば分かりやすいのはキッチンだよね。部屋の中央においてあるあのスタイルなんて、昔ながらの囲炉裏と同じだよね。囲炉裏を中心におくと料理と暖房の両方の意味がある。その立ちこめた熱気は家を暖めて、それをみんなで囲んでコミュニケーションを生み出す。で、その原点はどこかって言うと、人が好きで地球が好き。だからモイスの精神と共通なんです。それを政治的アプローチ以外の手法でやれるのは、建築じゃないかな。未来へ発信できる「覚悟を持った提案」、それが建築であると思っています。
それこそ、荒川さんが言い放った「天命反転」ということなのかな。

【三菱商事建材 塩地さん】
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2005年12月20日【現場インタビュー】第三回 三菱商事建材株式会社 塩地博文さん @ |

【三菱商事建材 塩地さん】
今回のインタビューは三鷹天命反転住宅の内装の壁材である「モイス」を提供して頂きました三菱商事建材株式会社モイス事業部の塩地博文さんにお話を伺いました。
◆芸術から建築へ 〜リアルの世界への挑戦〜
ABRF 今回の三鷹プロジェクトそして荒川修作+マドリン・ギンズとの仕事について教えて下さい。
塩地 やわらかくしゃべっていいですよね(笑)。
ズバリ言うとね、今回荒川さんはリアルへの挑戦をしたのだと思う。建築は全てリアルなんですよ。特に住宅というのはそこに人が住み、息をし、生活が生まれる。「三鷹天命反転住宅」は芸術家、荒川修作の現実への挑戦ですよ。その挑戦だけでも賛辞を送りたい。素晴らしい挑戦だと思う。
芸術作品はいにしえから、触れる物で、身近に感じられる物だっでしょ。だけどあるときからショーケースの向こう側にあって、経済がキャンパスになってしまった。そういった中で本来持っていた芸術の真髄が変質し始めているんじゃないかな。荒川さんはまさにそういった時代の中で生きてきて、もともと持っていた芸術という意味を、建築っていう道具を使って、世の中に問い直そうという試みに挑戦したんだと思ってます。そしてそれに住ませようというのは、ある意味で芸術家の枠を、大きく飛び出したんだと思うし一時的には捨てたのかもしれない。
ABRF もともとの芸術の意味を取り戻すために、あえて芸術家であることをやめたと。
塩地 そう。それからもうひとつは、文化とか芸術というのものが限られた空間の中でのエンターテイメントだという、そういう世紀が終わってきてますね。
荒川さんは常に生きているもの、生命というものに関わってきているんだと思うんだけど、例えばガラスケースに入ったモナリザよりも、触れるモナリザを欲しているんだと思うんです。そしてそれを行えるものは何かって言うと、開放的で無限性をもった建築しかないんですよ。
◆荒川修作の夢を、最小単位で保証したい
【moissを使った球体の内壁】
ABRF 「モイス」の特徴として、曲げられる、加工できるといった「可変性」が今回のプロジェクトに役立てられていると思いますが、どうお考えですか。
塩地 そういった形状を自由に変えられるという部分で、曲線を多用している今回の住宅に適していると思います。でもそれだけだとプラスチックでも何でもできますよね。でも火災が起きれば有毒ガスが発生しちゃう。化学物質に過敏な人もいるでしょう。モイスの機能の特徴として、無機の天然素材から出来ていますから、燃えないし、空気の清浄化や湿度調整の作用もあります。また最後は土に戻せるんです。だから可変性だけではなく、ベーシックでありながら多機能な部材なんです。
荒川さんはマクロな目で建築の世界を見ていますが、僕らは逆に建築というものを因数分解したときの、最小構成物質のような物になりたいわけです。色々なものがあるけど、必要な最小単位の物は何なのか。余計な物を一切省いた時に浮かび上がった最小単位、それが部材としての大事な条件だと思うんです。
ABRF そういった縁の下の力持ちというか、ミクロの視点での品質保証が必要ということですね。
塩地 荒川さんは「夢」を持っていますが、私たちは「確かさ」を持っている(笑)。その共同作業がとてつもなく面白い。今回の仕事で最終的に思ったのは、建物というのは共通の空間で仕事をし、息を吸う。それをリアリストである我々がどう支えていくかということと、荒川さんが我々の基盤の上に立って、創造者たらんとして頂けるか、そういうひとつのイベントだった気がしますね。僕はすごく面白かったですよ。
ただ、荒川さんが創造したい物は何かということと、壊したい物は何かということを、もう少し左脳から右脳に移動させる作業が必要だったのかなあと。何を作り何を壊したいのかという、その基盤となるイメージがつかめれば僕らももっと、リアリストとしての能力を発揮できる気がしました。挑戦はしたけれど何にどう挑戦したのかということがもっと明確になれば、よかったなと。彼は建築に挑戦したのか、住む人に挑戦したのかっていうのを、その辺を含めてイメージがもっと下がってくると、より参加者が増えてくると思っています。
三菱商事建材【MOISS】のホームページ
http://www.moiss.jp
インタビューの模様は第二回に続きます
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2005年10月17日【現場インタビュー】第二回 株式会社竹中工務店 小坂茂訓さん、大川修一さん B |
【竹中工務店 小坂さん、大川さん】
三鷹天命反転住宅の施工を担当されている、株式会社竹中工務店作業所長 小坂茂訓さんと工事担当 大川修一さんのインタビュー最終回をお届けいたします。
◆三鷹天命反転住宅が生み出す今後の可能性
ABRF 荒川修作の考える建築コンセプトについて、長年建築に携わってきたお二人は、どのようにお考えですか。
小坂 我々建築に係わる人間はですね、ある意味では生産性というものを大切にしています。それは企業でもありますし、ビジネスでもありますから、同じものを沢山作ることによりコストダウンを図ったり、工期を短くしたりといった方向を追求する、というのが一般的な考えとしてあります。
しかし今回、カルチャーショックというか、先生は、そういったものだけを追い求めるのはいけない、とおっしゃるんですね。また、人間の住居ですから、常にそこに住む人の事を考えて進めなくてはいけないと、そういうことを言いたかったのだと思います。かつての日本の家がそうだったように、ひとつひとつの部屋が住む人によって違ったり、また形によって人の動きも変わったり、といったところに主眼を置いているのだと思います。そのきっかけとしてこの三鷹天命反転住宅はあるんだ、という意味合いを先生のお話の中から感じました。

【三鷹現場にて】
大川 私は先生のお話や、実際現場で出来始めている部屋を見て、強く思うことがあります。それは、日本的とかアメリカ的とかではなく、それらのそれぞれの長所や特徴をミックスして融合したものを表現したいのではないか、と感じています。本当の意味での合理性ですね。例えば先生のお若いときに感性を磨いたいにしえの日本の、「タタキの土間」や「畳の部屋」、「障子」や「敷石」などを入れたかと思うと、近代アメリカのいい意味で完成されたもの、例えばユニットシャワーを使ってみたり、ダイニングキッチンを部屋の中央に持ってきたり、そういうごちゃ混ぜになっている。さらに、それらに先生独自のアイデア、丸い部屋やカラフルな色使い、窓の大きさが全て違うといった、本当に色々なものをミックスした上で集約している、そういうのを強く感じましたね。だから当初我々がこれを建築するときにどう思ったかといったら、もう頭はパニックです!(笑)
でも、それが実際に出来初めて見てみると、不思議な落ち着きがあったり、空間の広さや、空気の流れを感じるといった、住宅に必要な条件が全て備わっているんです。これは本当に驚きましたね。
ABRF 全景もあらわになりましたが、近隣の方からの評判というのはありますか。

【荒川修作と大川さん】
大川 通行人の方々が、皆さん興味を持って尋ねに来るというのはあります。「これは一体何になるのですか?」なんて聞いてきてね。「普通の集合住宅ですよ」と返事するんですがね(笑)。
そういえば現場のすぐ脇にパン屋さんがあるんですが、お客さんが、三鷹天命反転住宅のことをしょっちゅう聞いて来て、「天命反転パン」という三鷹住宅の形に模したパンを作ろうなんて話にもなっているんですよ(笑)。
ABRF 天命反転パン!?
大川 本格的ですよ(笑)。球体や円筒の形をパンで作って部屋の形にして、色もちゃんとジャムとかクリームで色付けしてるんですよ。これも先生の「環境が生活を変える」と常々おっしゃる影響力の一つです(笑)。
ABRF 最後に、三鷹天命反転住宅の現段階までの出来栄えと、完成したらここはぜひ見てもらいたい、もしくは三鷹住宅に対する思いという点をお聞かせ下さい。
小坂 出来栄えと言うか、どれだけ先生のイメージしたものを忠実に具現化出来たかということになるかと思うんですよね。ですから特に、荒川先生に注目してくださっている方々が、これを見て先生の作品じゃないんじゃないかと言われることがないようにまとまっていれば先生のイメージに非常に近いものになったのではないか、と言うふうに思います。私自身が評価するというのはなかなか難しくて、これが出来上がってから色々なところで話題になり、批評されたり評価されたりといった中で、いい作品として残っていけばというふうに思います。
竹中工務店は慶長の時代から始まった歴史の長い会社で、実は「工務店」という言葉も竹中工務店が最初に作りました。私たちは「工務店」という言葉に「ものづくり」にこだわる一種の職人気質のような思いが込められていると考えています。その言葉に恥じない仕事になればいいなと心から思っています。
【竹中工務店 小坂さん】
大川 私はいつも最近思っているのは、先生が来日されるたびごとに最初に現場を見た瞬間の、「ニコッ!」とした顔が見たくて、それで仕事しているっていうのはあるんですよね(笑)。その逆で、あるとき天井の配管を見て「なんだこれは!」って言われて怒った先生の顔を見たときは、うわ、これは嫌だ!って思いました。やはり内容に満足して喜んで頂いけたかどうかというのは、どうしても態度に表れますんで、そういうお顔を最後にも見たいなというのがあります。
もう一つは、完成後に「小坂君、大川君、ここはね、本当はこういうのがあってね、こうなるはずだったんだよ」みたいな、次へのステップのアイデアのようなものを生み出すきっかけになってくれて、それを聞ければ最高だなって思います。(了)
【竹中工務店 大川さん】
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2005年08月30日【現場インタビュー】第二回 株式会社竹中工務店 小坂茂訓さん、大川修一さん A |
【竹中工務店 小坂さん】
前回に引き続き三鷹天命反転住宅の施工を担当されている、株式会社竹中工務店作業所長 小坂茂訓さんと工事担当 大川修一さんのインタビューをお届けいたします。
◆実際の作業を通して 〜現場責任者として気を使ったこと〜
ABRF 現場を管理されるお立場として、様々なご苦労があったと思いますが、いかがですか。
小坂 まず最初に挙げたいのは、床や壁が平ら・直角でないと言うことです。我々が現場を管理するという非常に重要な要素の一つとして安全というものがあります。そして、我々の使っている工具や機械というのは水平な場所に立って、もしくは置いて使用するように出来ているんです。そういった意味で水平でない場所で作業するというのはですね、常に働く人間が注意をし、危機意識を持っていないとすぐに怪我につながってしまうんです。その辺に常に気をつかっていた、重要な点の一つだと思っています。
ABRF確かに球体の部屋には、機械は置けないですね(笑)。
小坂 ええ。丸いというのもどちらが中心でどちらが端っこかというのも非常に分かりにくくて、作業の動きというのも影響してくるんです。我々の仕事というのは後ずさりながら作業する仕事というのがあるんですね。例えば、今まで施工してきた従来のタイプの間取りですと、もちろんその個々の違いはあるにせよ、感覚的に自分がどの辺にいるか分かるんです。ここが端っこだよとか、ここから先は危険だよということが目で見なくても感覚的に分かるんですね。ところが今回は、部屋の間取りも特殊性が強くて、ダイニングキッチンを中心に、小部屋がその四方に配置されている。また地面がうねっていたり、さらには円筒形や球体という部屋もあることからですね、作業員の動きも感覚的でなく、しっかり自分の位置を把握して作業しなくてはなりません。丸い部屋だと自分も回らないと作業できませんね(笑)。そういった意味で、非常に不安定な環境の中で仕事をしていますので、いかに怪我をさせないか、というのが管理の中で今回特に重要な要素になっています。
大川 今まさに小坂が言っていたのですが、ユニットプレキャストコンクリートを構築していたときに、まず最初に周囲やベランダの手すりを先行して設置したというのはそういうことなんです。丸い、もしくは床のうねった建物で後ろに下がっても危険がないように、作業員が作業を始める前に手すりを先に設けているというのが、作業の中で考えたところです。
ABRF 実際の作業に入って、その中で気づいたことを実践していくということですね。
大川 まさにその通りです。そういった臨機応変は数え上げたらきりがないですね。
◆品質を守るために 〜工夫とやり取りの中で〜
【三鷹現場にて】
ABRF 集合住宅の建築となると、それこそ多くのメーカーとの関わりがあるとおもいますが、今回のプロジェクトで特に何か感じたことはありますか。
小坂 そういった各メーカーとのやり取りのところにくると、我々の仕事の中で特殊なものというのはありません。規模としてもっと大きなプロジェクトになると、はるかに多くのメーカーとのやりとりが出てきますので、そういったものを積み重ねていく、という形になりますから、今回に限って特殊だというものはありません。
ただ、先ほどからも話題に出ているように、そのメーカーの製品をいざ取り付けてみて、先生のイメージや、お考えになる機能性と合致しているかというのは我々には判断できないんです。ですが普段先生はニューヨークに住んでいらっしゃいますので、例えばあるメーカーの製品を検査をしましょう、ということになっても、先生が実際に検査に伺うことは出来ません。例えば大川が見に行きました、でもそれは先生の替わりにはなれません。ですからそこで合格といっても、実際にできあがったものを先生が見たときに、それは違う、と言われればそれで全部足元をすくわれてしまうわけですね。その辺が、常に心配としてあるわけです。ですから、そういった製品に関しても、来日時にひとつひとつ先生に確認してもらう。先ほどお話した「試作施工」の考えとまったく同じですね。
今回の仕事の上での「品質を守る」という意味は「先生のイメージを守る」ということが、非常に重要な要素であるわけですから。
【三鷹現場にて】
大川 品質を守る、という意味では、「水平・垂直・直角」これにとても苦労しました。「水平・垂直・直角」があると非常に品質を判断しやすいんですね。例えば少し曲がっていると、「こっちが下がっているぞ」というのが目で見てもある程度分かるのですが、壁が曲線を描いていたり、床がうねっていたり、もしくは潜っているので、例えばここに立って「これが直角だ、これが平行だ」というのが非常に出しづらいんです。
ABRF 基準点がないということですね。
大川 そうです。僕らは絶えず一つの基準を見据えながら、「右だ、左だ、上だ、下だ」という指示をしています。ところが基準が非常にあやふやで、あることはあるんですが、通常と違う基準になっていますので、物事の観点と、指示の仕方が非常に難しかったことがよくありました。例えば床からの垂直、床が平らならば、床から1mという指示ができるのですが、床に勾配があるために、床の高い位置から1mなのか、床の低い位置から1mなのか、そういうことが分からないんですね。
ABRF そういった場合での作業員の方たちへの指示などはどのようにするのですか?
大川 例えば、床がこう斜めになっていて、その傾斜がどこまで続くのかを指示する、というのがあるとしますね。傾斜は先生の感覚的な斜面ですから、その立ち上がりがどこまで見えるようになって、どこで終わるのかというのを作業員に伝える時には、例えば「この辺で消えていく」といったような指示をします。この「消えていく」という言葉、それから「沈んでいく」という言葉、それから「ず−−と上がっていく」この不思議な三つの言葉を、この現場ではよく使っているんですね。
小坂 それは建築用語ではないんです。ここの現場の特殊な用語として使っているんです(笑)。ですから先生に来て頂いた時に、例えばこの床のうねった形を、手で表現されたり脚の動きで表現されたりしたものを、試作施工したひとつの部屋で仕上げて、先生に見てもらうというプロセスなんですね。それにOKがでれば、他の部屋にも同じようにやればいいという、ひとつの「基準」ができるんです。その「基準」こそが品質を守るための、重要な手掛かりですね。それでもなお、全室が特殊なものですし、先生はそれぞれ個々の部屋にも特殊性を持たせたい、という意向もお持ちですから、そう単純にはいきませんが(笑)
最終的には、我々が先生から聞いた言葉を、どれだけ把握して現場全体の共通理解にできるか、ということにかかっている。ですから、ある意味我々は先生の仕事の伝道者ですね(笑)。
【三鷹現場にて】
インタビューの模様は第三回に続きます
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2005年08月15日【現場インタビュー】第二回 株式会社竹中工務店 小坂茂訓さん、大川修一さん @ |
今回のインタビューは三鷹天命反転住宅の施工を担当されている、
株式会社竹中工務店作業所長 小坂茂訓さんと工事担当 大川修一さんです。図面を実際に住宅へ仕上げて行く過程でのいろいろなお話を伺いました。
ABRF 本日は施工現場ならではのお話をお聞きできればと思います。どうぞよろしくお願いします。
小坂・大川 よろしくお願いします。
◆ムズカシイ!
ABRF 三鷹天命反転住宅もかなり作業が進んできていると思いますが、最初にイメージ画を見たときの印象はいかがでしたか?
小坂 私はこの絵を見たときに、そのカタチよりも、それをどういうふうにまとまっていくかということに心配がいって、球体の部屋や色が特殊だということでの驚きは余りありませんでした。むしろ特殊な色や形をどうまとめていくという心配の方が大きかったです。
大川 私はまず色にびっくりしました。その次に、構造図を見て「これは大変だ!」と思いました。というのはこの住宅は基礎部分に鉄筋を非常に多く使い、その上にユニットプレキャストコンクリートをセットしなくてはならない。図面と基本工程表も添付されていたのですが、これで本当に出来るのかと思いましたね(笑)。後で、設計図書を見て調べたのですが、これを見て構造上更に驚きました。これは上の階も更に難しい!と。
【三鷹天命反転住宅の基礎部分】
ABRF どういった意味で難しかったのでしょうか?
大川 三鷹天命反転住宅は規模は小さいながらかなり様々なものの集約的なものなんですよ。というのは、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、プレキャストコンクリート造、壁式構造、そういったものが全て入っているんです。器は小さいけれども、少しずつ全て入っているんですよ。
また、ジョイントやコネクションに関しては新しい工法が入っています。ユニットプレキャストの足元を固定する工法が、通常のアンカー工法と違って、新しいネジ式でとめたり、グラウト注入をしたり、機械式ジョイントという工法を採用しています。さらに、そのアンカーが通常なら一つの柱に対して、通常8本多くて10本ぐらいなのですが、ここはなんと369本入っています。ウワ一って思いましたよ!
僕はあれをピタって納めるにはどうすればいいかといろいろ悩みまして、小坂に無理を言って「アンカーフレーム作らせて下さい」だの「ジョイントのアンカーではこんなんでは納まりません」だの言って喧々諤々やりました(笑)。

【機械式ジョイント工法】
◆イメージをつかみとるために 〜芸術家アラカワとの格闘〜
【竹中工務店 小坂さん】
小坂 当初は先生と仕事をしていく上で様々な戸惑いがありました。なかでも一番先生の言葉で分からなかったのは、床が“うねっている”という単語です。そこに日本古来からあるタタキを使いたいというご希望があったのですが、このうねっているという感じが設計図によるものではなく、感覚的な表現でして、その根拠を伺うと、大きなうねりと小さなうねりが混ざっていて、大きなうねりは大人の土踏まずの勾配で、小さなうねりはお子さんの土踏まずの勾配になっている、ということでした。というのも、別のプロジェクトで土間の代わりにフローリングを採用したのですが、それが逆に、滑りやすかったり急激な段差になったりして意図されない効果が生まれてしまったと考えていらっしゃったからです。またタタキの材料については、当初は先生は本物というか、昔使われていた本来のタタキにこだわりがありまして、でもそれはコンクリの上に使えるものではないので、それに見合った材料を使いましょう、という提案をしたのですが、そこにどうも行き違いがあったようです。それは、私たちが出した見本が、四角いチップだったんですが、先生はその四角いチップをタイルのように敷き並べて使う材料だと理解されたようです。
ABRF どのように解決されたのですか?
小坂 大川と考えて、まず実際に作って、見ていただくという手法に切り替えたんです。先生と我々の間で実際に現場でやってみて、実際に使うものを見ていただいて、先生の細かいニュアンスを我々がフィードバックしていく方法を計画いたしました。これは「試作施工」というものです。今考えると気が遠くなりそうですね。
大川 このころは我々の考えが先生にご理解いただけないというジレンマが常にあって、「先生違います!我々はこういうことを考えています!」といっても、やはり言葉では伝わらない部分が非常に多く苦しかったのです。でも作業所において小坂が「試作施工」にGOを出してくれたので、本当にやりやすくなりました。
ABRF 手間と時間を考えるとなかなかやれないですよね。
小坂 通常なら、お金がかかります!工期が延びます!とういことで攻め立てると思います。今回そういうことがないといったらウソになりますが、極力そういった方向に近づけなかったというのは確かですね。
◆プロセスの再構築〜「試作施工」というやり方〜

【竹中工務店 大川さん】
大川 ためしに作ってみて、無理、無駄、手もどりがなく、先生の感性とお考え、プランニングを確認したい、ということが今の「試作施工」というやりかたなんですね。ですからあらかじめリーダーから職人の先端まで、「一度仮につけてまた外すんだよ」と、そういうことを言い含めて仕事をしています。ですから、天井を張っても、もし先生のイメージと違えば、すぐに外せるようにしてあります。配管についても、先生はそれまでは図面どおりでいいとおっしゃっていたが、実際に見てウワー!っと驚かれました。でもこれは試作施工であるから、助かったわけですね。なぜかというと中に実際にはまだ線は入ってないし、所々仮に止めてあるという形にしてあるだけだからです。
ABRF 配色を決めるときにも、何回も同様のやり取りがありましたね。
大川 色についても同じですね。カラーバリエーションの全14色を決めるときに、まず見本色を作って先生に見てもらいました。第一回目は14色のうち6色はOKが出ました。第二回目にまた6色がOKが出ました。これで12色です。赤と青の二色は最後まで通らなかったんです。「それでもう一度やらせてください」ということで、先生が帰国される最後の機会に見てもらって、三回目の打合せにしてやっと14色全てにOKが出ました。実際は先生に見せないものも含めて6回試作いたしました。そのときに、そのうちの一つを肌色ではなくて土色にしてくれという案まで出たんです。その時に気づいたんです。これは先生に対して、僕らが決めてくれと言うのではなくて、イメージしているものを僕らが近づいて出してあげる。それで最終的に選択・決定してもらう。例えば「Aはこれこれこういう理由で少し違うものです」、「Bは先生の言ったものです」、「Cは我々がアレンジしたものです」、「Dはまるっきり違いますが基本に忠実にやったものです」というように最低4つくらいはその根拠を出すようにして作成をしています。そういう確認作業を通している間に少しずつやり取りが変わってきた、ということだと思いますね。

【色の確認作業】
小坂 今回驚いたと同時に分かったことは、出来上がるものは建築ですが、その作業プロセスは芸術の手法なんです。それはもちろん先生が芸術家ご出身ということもありますが、従来のやり方のように、単純に設計図があればいいというのではなく、ひとつひとつ実際のものを見て頂き、確認し、それと同時に我々自身が先生の気持を理解するというのが、三鷹プロジェクトを作っていく上で一番大切なことだと思いました。
このことを理解して、確実に作業の方向性が決まり、現場の理解は当初よりもはるかにアップしたのは確かです。手間はかかりますけどね(笑)。
インタビューの模様は第二回に続きます
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2005年05月18日【現場インタビュー】第一回 株式会社安井建築設計事務所 吉冨聡さん @ |

第一回目のインタビューは株式会社安井建築設計事務所の企画部、吉冨聡さんです。吉冨さんは普段より企画部という立場から、クライアントのニーズをつかみ、それを設計スタッフに伝え、プロジェクトを完成させる仕事をされています。今回は荒川+ギンズとの出会いから三鷹天命反転住宅を推進するにあたってのいろいろなお話をお伺いました。
ABRF 荒川建築について色々とお聞きしたいと思います。本日はよろしくお願いします。
吉冨 どうぞよろしくお願いします。
ABRF 今回のプロジェクトの主である荒川修作との出会いからお聞かせ下さい。
吉冨 荒川さんとは名古屋市の志段味循環型モデル住宅の件で平成14年の秋にお会いしました。恥ずかしながらその時は荒川さんを存じ上げませんでした。その後、荒川さんが進めていた名古屋市志段味プロジェクトの打合せを拝見させていただき、その迫力ある話に、ただただ驚いていたという印象ですね。
ABRF 迫力ある話ですか(笑)。
吉冨 ええ(笑)。最初打ち合わせに同席した時、なぜか荒川さんがずーっと怒っていらっしゃって…。最初は僕も荒川さんのことをよく存じ上げていなかったので、「なんでこんなに怒ってるんだろう」と思っていたのですが、実際は怒っているのではなく、荒川さんが名古屋市の方々へ考えを伝えてようとしている時のとてつもなく真剣な姿なんですね。あれは本当に凄い迫力でした。
ABRF 初めて荒川修作の建築を見たときの印象についてはいかがでしたか。
吉冨 一言で言って衝撃的でしたね。
ABRF なるほど。どういうところが?
吉冨 荒川さんは、はじめから私たちが持っている建築の考え方や手法に疑問を持つところから考えられています。その観点が建築をしている者からすると驚きでした。私たちの考えている建築の常識を打破している、と感じるところもありますね。
ABRF 吉冨さんは、今回のプロジェクトでは全体のマネージャー的な役割だと思うのですが、その視点での自分の役割や位置づけはどう考えていますか。
吉冨 建築の中で常識とされている考え方を捨て、それを今まで私たちが培ってきた技術力と結び付けて、限りなく荒川さんの求めているものに近づけていく、ということが仕事ですかね。通訳としての役割が大きいです。軟骨のような役割でフニャフニャしながら、コンセプトと現場を繋げるという。クライアントが求めるものやコンセプトを実現させる、それが本来の建築の姿なのかなと思いました。
ABRF そういう中間的な立場の中では、苦労も多いと思いますが。
吉冨 荒川さんの住宅は完全な形ではまだ一度も出来ていないので、自分が荒川さんとのやり取りで間違って理解してしまうと、それが計画に反映されてしまいますので、そこは慎重にやりたいなと。やはり今まで誰も建てられなかったものですから、要求されたものをプロとして作っていくという。今回の僕のテーマはそれかもしれませんね。
ABRF 現段階で三鷹天命反転住宅の施工が進んでいますが、現在までの出来栄えというのは?
吉冨 コマーシャル抜きにしてもかなり面白いものになっていると思います。と同時に計画の中で今回は断念して頂いた部分なども含め不安も同時にあります。

【三鷹天命反転住宅打ち合わせ風景】
ABRF 三鷹天命反転住宅では球体や円筒形の部屋という今までにない形を取り入れています。最初にそれをご覧になった時の印象というのは?
吉冨 正直に言って、別に驚かなかったです。荒川さんとのお付き合いは志段味循環型モデル住宅の頃からご一緒していたので、最初から普通じゃないということは知っていましたから(笑)。ただ三鷹天命反転住宅のCGを初めて見たときは、いい意味で裏切られましたね。この想像力はどこから来るのかなと思いました。建築というより、最初のインパクトは絵としての凄さかもしれません。そういった意味で芸術の分野でご活動されてきたという側面もやはりあるのかなあと感じました。
ABRF まだ建設途中ですが、実際に球体や円筒形の部屋に入ってみていかがでしたか。
吉富 まあ設計をやっていたからというのもあるんですが、あの四角く抜かれた窓のおかげで、球体の部屋がこんなに圧迫しないものなんだなと感じました。最初はもっと極端に言うと、気が狂うんじゃないかなと思ったりもたんですが、意外と開放感があってこれはいけるなあと。そういう意味では非常に驚きました。また体験しながら、荒川さんが既に完成形をイメージ(体現)されているのだなとつくづく思いました。
ABRF そういう体験しないと分からないものを、事業として成立させていくことは本当に難しいですよね。
吉冨 そうですね。僕は最初の荒川さんとの仕事は、志段味循環型モデル住宅をどうしたら事業化できるかということろから始めましたから、住宅のクオリティーと平行してこのプロジェクトをどうやったら推進できるかというのは、僕にとっての非常に大きな課題だと思っています。
インタビューの模様は第二回に続きます







