2005年08月30日

【現場インタビュー】第二回 株式会社竹中工務店 小坂茂訓さん、大川修一さん A

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竹中工務店 小坂さん
【竹中工務店 小坂さん】

前回に引き続き三鷹天命反転住宅の施工を担当されている、株式会社竹中工務店作業所長 小坂茂訓さんと工事担当 大川修一さんのインタビューをお届けいたします。

◆実際の作業を通して 〜現場責任者として気を使ったこと〜

ABRF 現場を管理されるお立場として、様々なご苦労があったと思いますが、いかがですか。

小坂 まず最初に挙げたいのは、床や壁が平ら・直角でないと言うことです。我々が現場を管理するという非常に重要な要素の一つとして安全というものがあります。そして、我々の使っている工具や機械というのは水平な場所に立って、もしくは置いて使用するように出来ているんです。そういった意味で水平でない場所で作業するというのはですね、常に働く人間が注意をし、危機意識を持っていないとすぐに怪我につながってしまうんです。その辺に常に気をつかっていた、重要な点の一つだと思っています。

ABRF確かに球体の部屋には、機械は置けないですね(笑)。

小坂 ええ。丸いというのもどちらが中心でどちらが端っこかというのも非常に分かりにくくて、作業の動きというのも影響してくるんです。我々の仕事というのは後ずさりながら作業する仕事というのがあるんですね。例えば、今まで施工してきた従来のタイプの間取りですと、もちろんその個々の違いはあるにせよ、感覚的に自分がどの辺にいるか分かるんです。ここが端っこだよとか、ここから先は危険だよということが目で見なくても感覚的に分かるんですね。ところが今回は、部屋の間取りも特殊性が強くて、ダイニングキッチンを中心に、小部屋がその四方に配置されている。また地面がうねっていたり、さらには円筒形や球体という部屋もあることからですね、作業員の動きも感覚的でなく、しっかり自分の位置を把握して作業しなくてはなりません。丸い部屋だと自分も回らないと作業できませんね(笑)。そういった意味で、非常に不安定な環境の中で仕事をしていますので、いかに怪我をさせないか、というのが管理の中で今回特に重要な要素になっています。

大川 今まさに小坂が言っていたのですが、ユニットプレキャストコンクリートを構築していたときに、まず最初に周囲やベランダの手すりを先行して設置したというのはそういうことなんです。丸い、もしくは床のうねった建物で後ろに下がっても危険がないように、作業員が作業を始める前に手すりを先に設けているというのが、作業の中で考えたところです。

ABRF 実際の作業に入って、その中で気づいたことを実践していくということですね。

大川 まさにその通りです。そういった臨機応変は数え上げたらきりがないですね。


◆品質を守るために 〜工夫とやり取りの中で〜

三鷹現場にて
【三鷹現場にて】


ABRF 集合住宅の建築となると、それこそ多くのメーカーとの関わりがあるとおもいますが、今回のプロジェクトで特に何か感じたことはありますか。

小坂 そういった各メーカーとのやり取りのところにくると、我々の仕事の中で特殊なものというのはありません。規模としてもっと大きなプロジェクトになると、はるかに多くのメーカーとのやりとりが出てきますので、そういったものを積み重ねていく、という形になりますから、今回に限って特殊だというものはありません。

 ただ、先ほどからも話題に出ているように、そのメーカーの製品をいざ取り付けてみて、先生のイメージや、お考えになる機能性と合致しているかというのは我々には判断できないんです。ですが普段先生はニューヨークに住んでいらっしゃいますので、例えばあるメーカーの製品を検査をしましょう、ということになっても、先生が実際に検査に伺うことは出来ません。例えば大川が見に行きました、でもそれは先生の替わりにはなれません。ですからそこで合格といっても、実際にできあがったものを先生が見たときに、それは違う、と言われればそれで全部足元をすくわれてしまうわけですね。その辺が、常に心配としてあるわけです。ですから、そういった製品に関しても、来日時にひとつひとつ先生に確認してもらう。先ほどお話した「試作施工」の考えとまったく同じですね。

 今回の仕事の上での「品質を守る」という意味は「先生のイメージを守る」ということが、非常に重要な要素であるわけですから。

三鷹現場にて
【三鷹現場にて】


大川 品質を守る、という意味では、「水平・垂直・直角」これにとても苦労しました。「水平・垂直・直角」があると非常に品質を判断しやすいんですね。例えば少し曲がっていると、「こっちが下がっているぞ」というのが目で見てもある程度分かるのですが、壁が曲線を描いていたり、床がうねっていたり、もしくは潜っているので、例えばここに立って「これが直角だ、これが平行だ」というのが非常に出しづらいんです。

ABRF 基準点がないということですね。

大川 そうです。僕らは絶えず一つの基準を見据えながら、「右だ、左だ、上だ、下だ」という指示をしています。ところが基準が非常にあやふやで、あることはあるんですが、通常と違う基準になっていますので、物事の観点と、指示の仕方が非常に難しかったことがよくありました。例えば床からの垂直、床が平らならば、床から1mという指示ができるのですが、床に勾配があるために、床の高い位置から1mなのか、床の低い位置から1mなのか、そういうことが分からないんですね。

ABRF そういった場合での作業員の方たちへの指示などはどのようにするのですか?

大川 例えば、床がこう斜めになっていて、その傾斜がどこまで続くのかを指示する、というのがあるとしますね。傾斜は先生の感覚的な斜面ですから、その立ち上がりがどこまで見えるようになって、どこで終わるのかというのを作業員に伝える時には、例えば「この辺で消えていく」といったような指示をします。この「消えていく」という言葉、それから「沈んでいく」という言葉、それから「ず−−と上がっていく」この不思議な三つの言葉を、この現場ではよく使っているんですね。

小坂 それは建築用語ではないんです。ここの現場の特殊な用語として使っているんです(笑)。ですから先生に来て頂いた時に、例えばこの床のうねった形を、手で表現されたり脚の動きで表現されたりしたものを、試作施工したひとつの部屋で仕上げて、先生に見てもらうというプロセスなんですね。それにOKがでれば、他の部屋にも同じようにやればいいという、ひとつの「基準」ができるんです。その「基準」こそが品質を守るための、重要な手掛かりですね。それでもなお、全室が特殊なものですし、先生はそれぞれ個々の部屋にも特殊性を持たせたい、という意向もお持ちですから、そう単純にはいきませんが(笑)

最終的には、我々が先生から聞いた言葉を、どれだけ把握して現場全体の共通理解にできるか、ということにかかっている。ですから、ある意味我々は先生の仕事の伝道者ですね(笑)。

三鷹現場にて
【三鷹現場にて】


2005年7月25日 三鷹天命反転住宅現場事務所にて
インタビューの模様は第三回に続きます

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2005年08月15日

【現場インタビュー】第二回 株式会社竹中工務店 小坂茂訓さん、大川修一さん @

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竹中工務店 大川さん・小坂さん

今回のインタビューは三鷹天命反転住宅の施工を担当されている、
株式会社竹中工務店作業所長 小坂茂訓さんと工事担当 大川修一さんです。図面を実際に住宅へ仕上げて行く過程でのいろいろなお話を伺いました。

ABRF 本日は施工現場ならではのお話をお聞きできればと思います。どうぞよろしくお願いします。

小坂・大川 よろしくお願いします。


◆ムズカシイ!


ABRF 三鷹天命反転住宅もかなり作業が進んできていると思いますが、最初にイメージ画を見たときの印象はいかがでしたか?

小坂 私はこの絵を見たときに、そのカタチよりも、それをどういうふうにまとまっていくかということに心配がいって、球体の部屋や色が特殊だということでの驚きは余りありませんでした。むしろ特殊な色や形をどうまとめていくという心配の方が大きかったです。

大川 私はまず色にびっくりしました。その次に、構造図を見て「これは大変だ!」と思いました。というのはこの住宅は基礎部分に鉄筋を非常に多く使い、その上にユニットプレキャストコンクリートをセットしなくてはならない。図面と基本工程表も添付されていたのですが、これで本当に出来るのかと思いましたね(笑)。後で、設計図書を見て調べたのですが、これを見て構造上更に驚きました。これは上の階も更に難しい!と。

三鷹天命反転住宅の基礎部分
【三鷹天命反転住宅の基礎部分】


ABRF どういった意味で難しかったのでしょうか?

大川 三鷹天命反転住宅は規模は小さいながらかなり様々なものの集約的なものなんですよ。というのは、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、プレキャストコンクリート造、壁式構造、そういったものが全て入っているんです。器は小さいけれども、少しずつ全て入っているんですよ。

 また、ジョイントやコネクションに関しては新しい工法が入っています。ユニットプレキャストの足元を固定する工法が、通常のアンカー工法と違って、新しいネジ式でとめたり、グラウト注入をしたり、機械式ジョイントという工法を採用しています。さらに、そのアンカーが通常なら一つの柱に対して、通常8本多くて10本ぐらいなのですが、ここはなんと369本入っています。ウワ一って思いましたよ!

 僕はあれをピタって納めるにはどうすればいいかといろいろ悩みまして、小坂に無理を言って「アンカーフレーム作らせて下さい」だの「ジョイントのアンカーではこんなんでは納まりません」だの言って喧々諤々やりました(笑)。

機械式ジョイント工法
【機械式ジョイント工法】


◆イメージをつかみとるために 〜芸術家アラカワとの格闘〜

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【竹中工務店 小坂さん】


小坂 当初は先生と仕事をしていく上で様々な戸惑いがありました。なかでも一番先生の言葉で分からなかったのは、床が“うねっている”という単語です。そこに日本古来からあるタタキを使いたいというご希望があったのですが、このうねっているという感じが設計図によるものではなく、感覚的な表現でして、その根拠を伺うと、大きなうねりと小さなうねりが混ざっていて、大きなうねりは大人の土踏まずの勾配で、小さなうねりはお子さんの土踏まずの勾配になっている、ということでした。というのも、別のプロジェクトで土間の代わりにフローリングを採用したのですが、それが逆に、滑りやすかったり急激な段差になったりして意図されない効果が生まれてしまったと考えていらっしゃったからです。またタタキの材料については、当初は先生は本物というか、昔使われていた本来のタタキにこだわりがありまして、でもそれはコンクリの上に使えるものではないので、それに見合った材料を使いましょう、という提案をしたのですが、そこにどうも行き違いがあったようです。それは、私たちが出した見本が、四角いチップだったんですが、先生はその四角いチップをタイルのように敷き並べて使う材料だと理解されたようです。

ABRF どのように解決されたのですか?

小坂 大川と考えて、まず実際に作って、見ていただくという手法に切り替えたんです。先生と我々の間で実際に現場でやってみて、実際に使うものを見ていただいて、先生の細かいニュアンスを我々がフィードバックしていく方法を計画いたしました。これは「試作施工」というものです。今考えると気が遠くなりそうですね。

大川 このころは我々の考えが先生にご理解いただけないというジレンマが常にあって、「先生違います!我々はこういうことを考えています!」といっても、やはり言葉では伝わらない部分が非常に多く苦しかったのです。でも作業所において小坂が「試作施工」にGOを出してくれたので、本当にやりやすくなりました。

ABRF 手間と時間を考えるとなかなかやれないですよね。

小坂 通常なら、お金がかかります!工期が延びます!とういことで攻め立てると思います。今回そういうことがないといったらウソになりますが、極力そういった方向に近づけなかったというのは確かですね。


◆プロセスの再構築〜「試作施工」というやり方〜

竹中工務店 大川さん
【竹中工務店 大川さん】


大川 ためしに作ってみて、無理、無駄、手もどりがなく、先生の感性とお考え、プランニングを確認したい、ということが今の「試作施工」というやりかたなんですね。ですからあらかじめリーダーから職人の先端まで、「一度仮につけてまた外すんだよ」と、そういうことを言い含めて仕事をしています。ですから、天井を張っても、もし先生のイメージと違えば、すぐに外せるようにしてあります。配管についても、先生はそれまでは図面どおりでいいとおっしゃっていたが、実際に見てウワー!っと驚かれました。でもこれは試作施工であるから、助かったわけですね。なぜかというと中に実際にはまだ線は入ってないし、所々仮に止めてあるという形にしてあるだけだからです。

ABRF 配色を決めるときにも、何回も同様のやり取りがありましたね。

大川 色についても同じですね。カラーバリエーションの全14色を決めるときに、まず見本色を作って先生に見てもらいました。第一回目は14色のうち6色はOKが出ました。第二回目にまた6色がOKが出ました。これで12色です。赤と青の二色は最後まで通らなかったんです。「それでもう一度やらせてください」ということで、先生が帰国される最後の機会に見てもらって、三回目の打合せにしてやっと14色全てにOKが出ました。実際は先生に見せないものも含めて6回試作いたしました。そのときに、そのうちの一つを肌色ではなくて土色にしてくれという案まで出たんです。その時に気づいたんです。これは先生に対して、僕らが決めてくれと言うのではなくて、イメージしているものを僕らが近づいて出してあげる。それで最終的に選択・決定してもらう。例えば「Aはこれこれこういう理由で少し違うものです」、「Bは先生の言ったものです」、「Cは我々がアレンジしたものです」、「Dはまるっきり違いますが基本に忠実にやったものです」というように最低4つくらいはその根拠を出すようにして作成をしています。そういう確認作業を通している間に少しずつやり取りが変わってきた、ということだと思いますね。

色の確認作業
【色の確認作業】


小坂 今回驚いたと同時に分かったことは、出来上がるものは建築ですが、その作業プロセスは芸術の手法なんです。それはもちろん先生が芸術家ご出身ということもありますが、従来のやり方のように、単純に設計図があればいいというのではなく、ひとつひとつ実際のものを見て頂き、確認し、それと同時に我々自身が先生の気持を理解するというのが、三鷹プロジェクトを作っていく上で一番大切なことだと思いました。

 このことを理解して、確実に作業の方向性が決まり、現場の理解は当初よりもはるかにアップしたのは確かです。手間はかかりますけどね(笑)。


2005年7月25日 三鷹天命反転住宅現場事務所にて
インタビューの模様は第二回に続きます

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2005年08月09日

瀬戸内寂聴さんがご来訪されました

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7月28日に、瀬戸内寂聴さんが三鷹天命反転住宅にご来訪されました。

瀬戸内寂聴さんは荒川修作と30年来のおつきあいで、今年の春、ニューヨークの荒川を訪ねて下さった際に、「今度、三鷹の家を見て体験してほしい」と荒川がお誘いしていたのがこのたび実現したというわけです。

三鷹天命反転住宅をご覧になった瀬戸内寂聴さんは、円形の畳の和室で寝転って「この家は気持ちのいい家だわ」とおっしゃったり、中央のダイニングキッチンに座って会話を楽しんだりと、この住宅を全身で感じてくださったようです。荒川の「あなたがここに住めば、死ななくなりますよ」という一言に、瀬戸内寂聴さんがニヤリと笑う場面もあったり。

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当日の二人の模様は、本日(8月9日)の朝日新聞に掲載されております。

また、8月5日東京新聞(夕刊)の瀬戸内寂聴さんの連載「あしたの夢」に「極彩色の死なない家 天才に不可能はない」という題名で来訪の模様を取り上げていただきました。

日本中を飛び回っていらっしゃる寂聴さん、三鷹天命反転住宅でのひとときで「建築する身体」を体感され、ますますお元気になられたのでは?とは荒川のひとりごとでした。瀬戸内さんありがとうございました。

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2005年08月08日

ご来場ありがとうございました

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去る、7月30日に行われた養老天命反転地10周年記念イベント「天命反転相談実 IN 養老天命反転地」は好評の内に無事終了いたしました。この度は多くのご来場ありがとうございました。京都造形芸術大学の講演会と併せて御礼申し上げます。

雨天による変更や、真夏の日差しなどの多くの心配もありましたが、当日は多くの来場者の方々に
お越し頂き、荒川修作も皆様とのお時間を大変楽しんでいる様子でした。

当日は、昨年養老天命反転地で10日間生活し反転地が身体に及ぼす影響を身をもって実験した名古屋市美術大学の榊原君のエピソードや、荒川修作の新曲(!?)なども飛び出し、養老天命反転地ならではの不思議な時間を共有できたのではと考えております。

ご来場いただいた皆様はいかがでしたでしょうか。
ご感想をお待ちしております。

ちなみに、お問い合わせを多くいただきました当日に流れた音楽の曲名ですが、Lenoirの「PARLEZ-MOI D'AMOUR」です。

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