THOUGHTS
ホモ・エクササイズー生き抜くことへの賛歌
日々新たに目覚めるために-荒川修作とともに
エルヴィス・プレスリーへの手紙
宿命反転都市を目指して

 
宿命反転都市を目指して

体の外側から人間の宿命(=死に向かう宿命)を変えていくために、風景や環境、街、家を精密な遺伝子のように構成し、形作る街。それが、荒川+ギンズの提唱する「宿命反転都市」です。

日本は第二次大戦後、驚くべきスピードで経済成長を遂げ、その急激な変化の中で新たな建築物、そして街が次々と生まれました。人々の生活も著しく変化し、豊かな時代と言われるようになって久しくなります。しかし、その豊かさに疑問符が投げられ、「本当の豊かさとは何か」について考えられるようになってからもまた、長い月日が経過しました。

平面の床と直線的な壁で隙間なく埋め尽くされた住居、転ぶ事さえも許されないアスファルトの路面、隣人の顔も知らないほど貧弱なコミュニティ環境…、利便性や安全性のみが追求された街が、そこに住む人々にどのような影響を及ぼしたのか。それは社会的な影響をダイレクトに受ける無防備な子供達において顕著に表れています。急増する少年犯罪に見られる道徳観・倫理観の欠如、著しい運動能力の低下、好奇心・意欲・主体性の欠如、そして心身症の増加。表層的な豊かさを追い求めたことによる代償に、子供達の心身は日々蝕まれています。

本当の豊かさとは何か。そしてそれを享受できる街とは。世界中が猛スピードで生成変化し続けている現代、新たな街作りの課題は何も日本に限られたものではありません。荒川+ギンズの「宿命反転都市」は、自然環境との共生といったエコロジーの観念に留まることなく、そこに住む人々の身体的・精神的影響に着目し、「次世代へ継承していく持続的なライフスタイル」を構築します。


宿命反転都市を目指して


身体の知覚を呼び覚ます街を作ります。それは、そこに住むことによって新たな身体の行為や動きが生まれ、そしてその動作を毎日知覚することで人間の未知の可能性が開かれる空間です。空間には直線が殆どなく、身体の知覚を刺激する曲線が交差します。例えば、住居では各部屋を区分する壁は全て湾曲した形状であり、床にも斜面があります。この街は「偶然性」「不思議」を日常的に体感させ、それによって「好奇心」や「意欲」を生み出してくれるだけはでなく、「心」の生育につながる様々な肉体的体験を引き起こしてくれる街となります。



宿命反転都市を目指して

次世代また次世代とそこに住む人々の生活、そして健康のためには「自然環境との共生」が必要不可欠なものであるという考えから、自然から提供される資源を活用し自給自足で生活する「資源循環」型の街を作ります。例えば、リサイクル資材を使い住居を建築する、住居の屋上を緑化する、街の中に段々畑のような農園を作る、そして栽培した有機野菜などをやり取りできるマーケットを作るなどの構想があります。


宿命反転都市を目指して

街はその場所に住む人々の行為や出来事によって織り成される「関係」によって成り立ち、成長していきます。そして同時にその「関係」によって人も成長し、形成されていくものです。「宿命反転都市」のデザインにおいて最も重要視されたひとつが、その「関係」を自然に築けるための構造であることです。住居は弧を描くような形に配置され、その中心部に地域住民が共同で使えるスペースが作られます。また、住居内ではキッチンが中心に据えられ、家族など同じ住居内に住む人々が必ず毎日顔を合わせる仕組みになっています。福祉施設においては既存の街のように遠方に隔離するのではなく、日々の生活を共有できるような近場に配置され、また、高齢者、若者の年代を超え関係を育てられる様々なコミュニケーションの場が多数設けられます。しかしそういった建築物の配置に限らず、この街ではその「構造自体」が人々の関係性を密接なものとなるように形作られているのです。「宿命反転都市」は必ずしも利便性のみを追求した街ではありません。人ひとりが通るのがやっとの細い道や斜面が数多くあるこの空間では、ここに生活する人同士の声や協力がなければならないものとなります。住むだけでお互いに声をかけ合う行為が必然的となる、それがこの街なのです。
   


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