THOUGHTS
ホモ・エクササイズー生き抜くことへの賛歌
日々新たに目覚めるために-荒川修作とともに
エルヴィス・プレスリーへの手紙
宿命反転都市を目指して

 
宿命反転都市を目指して


まだあなたは東京にいらっしゃいますか?秀作を集めたあなたの新しいCDはニューヨークで大ヒットし、ヒット・チャートのトップにランクされています。私は、グルグル回る「All Shook Up(邦題:恋にしびれて)」を見つめながら、RCA Victrola(レコード・プレーヤー)に釘づけになった8歳の少年のように、あなたの歌のとりこになりました。私は、もっていたヤンキースのベースボール・カードを、あなたの風船ガムのカードと交換しました。ある意味であなたは、初のギターを使った建築家だったのです。

あなたは、日本人の画家、荒川修作と米国人の詩人、マドリン・ギンズによる新しい本が刊行され、新しい住宅ができ上がったことに関心をもたれることでしょう。2人は、自分たちが「コーディノロジスト」と呼んできた役割を担って、様々な分野、主題、ヴォキャブラリー、人々を実験的な研究に組み入れ、デザインを健康的で知的な人々のための公園、住宅、アパートメントに調和させ、そして2人の40年におよぶ研究によれば、社会的な集約装置を超えたものであるニュータウンを、自らが「逆転可能な運命」と呼んだものに組み合わせています。彼らは、「死んでたまるか」と宣した彼らのマニュフェストに従って、その道を歩んでいるのです。


ARCHITECTURAL BODY

数十年にもわたる創作活動の後、彼らは最近、『アーキテクチュラル・ボディ』と題した新しい本を出版しました。それは、セックスについての本などではありません。それは、建物の中に住まうことに肉体がどのように関わり、対応するかについてのものです。この本は、他には見られない詩的でそして叙情的な建物についての哲学的な考察のコレクションであり、豊かで、深く、濃密な稀なる問いかけの歌集なのです。

その文章は生硬で荒々しく、若くまた太古の、狂気でありながらも光を放ち燃え上がる初期のロックンロールの炎であり、毛皮のごときものです。文章は、肉体と建物の間に知覚的な「着地点」を見いだし、そして定めるために、最も深い溝にまで食い込んでいます。批評的に再構築されたエッセイは、直感的で知的な過程であり続ける建築をめぐる思索の広く深い剣をもって、現代の建築の思考、感情、そして実践のエリート主義的な自己満足を切り裂いています。



たとえば2人の友人、アンジェラとロバートとともに空想的な住宅をつくることについての夢想に満ちた夕食でのディスカッションの中で、楽しみの混交を歌い上げるベッドの上の塊のまわりに何を建てるかを説明しています。これは、単なる「視覚のための建築」を超え、肉体と住宅との間の「コンセプト上の、そして知覚的なぶつかり合い」を目指した、荒々しい建物についての一遍の詩なのです。これは、私が新たなる非建築と呼んでいるものの、最たるものなのです。

この華やかな本は、あなたを笑わせ、涙させ、大声で叫ばせさえすることでしょう。

それは、あなたを決して眠らせることはありません。彼らは、とりわけ生きている間は、死ぬことを拒否しているのです。


ガルマン邸
ガルマン邸
そしてエルヴィス、ニューヨークと東京に「アーキテクチュラル・ボディ・リサーチ」と名づけたオフィスをもつ、このアラカワ+ギンズのチームが、ニューヨーク郊外ロング・アイランドのイースト・ハンプトンに、彼らの友人、アンジェラのための住宅を建てています。この住宅は、「バイオスクリーヴ・ハウス II」と呼ばれています。それは、既存の1950年代の小さな郊外住宅の増築となる、木立の中の空地に建つ第2の住宅です。最初の「バイオスクリーヴ・ハウス」は、2人が日本の養老で手がけた公園の中に建っており、あなたの近くにあるのです。


あなたはいつでもその建物を見に行くことができます。それは、ロックンロールと同じように素晴らしいものであり、時にはロックンロールをしのぐものでもあります。

それは、エネルギーにあふれています。色彩が飛び交い、うねり、公園の中の人々に公開されたこのパヴィリオンを、色鮮やかで目が眩むような、すべての伝統的な、そして近代的な合理性という観念を吹き飛ばす、万華鏡的な不協和音の炸裂へと転じています。建物は、上が下になり、下が上になり、前が後ろになり、後ろが前になり、内が外となり、外が内となった、反住居(アンチ・ハウス)なのです。それは、人々をクラクラさせる存在です。

あなたに楽しんでいただけるようにここに掲載した第2の「バイオスクリーヴ・ハウス」は、実験室としての住宅の中での肉体の実験場としての住宅の第2の曲です。それは小奇麗で知的な建築にたいする、ある種の「アンチ(対立物)」なのです。それは、第1のものよりもさらに生硬で荒々しく、日々刻一刻と、住宅のあらゆる場を通して肉体とインタラクトする建物となるものです。私たちは、荒々しく大胆な映画的な絵画、おそらくは洗練されていないヴァン・ゴッホの絵の中に住むように、「バイオスクリーヴ」に住んでいるのです。


建築中のガルマン邸(バイオスクリーヴ・ハウス II)


この「バイオスクリーヴ」という創作物の内に生きるということについては、シンプルな、そして複雑なレヴェルの様々な考察があります。その基本的なものの1つは、この住宅は、私たちを肉体の内側と心、魂、そして外側の人工的な世界から切り離し、そして結び合わせるというものです。私たちは、相互的な平行物として存在する思慮深い肉体としての建築に住むことで、私たちの肉体が何を学ぶことができるのかを探究するために、哲学的な、そして知的な肉体から心へ、そして肉体から住宅へ深く分け入っていくように、アラカワ+ギンズに招かれ、求められ、そして挑まれているのです。この相乗りの生活は、問いかけ、見つめ、感じ、臭い、触れる、物理的な肉体のすべて、目、手、足、そして脳の日常的な「行動」からなる、絶えることなく続く生物学的な人間の過程と見ることができます。この日々の探求は、心の全存在、そして肉体の内なる心をとらえる、より大きな絵を描きだしています。これは、そこで私たちの全存在が誠実にして忠実なる裂け目の内に生きる、肉体としての住宅/住宅としての肉体なのです。


もう1つのよりシンプルなレヴェルにおいては、この「バイオスクリーヴ・ハウスII」はまた、よりよく生き、そして私たちの真の健康を増進するための、日々の家庭生活のためのごく平凡な作品とみることができます。4つの部屋は、キャビンのプリミティヴな置き場として大地の中に掘られた、サンクンになった打ち固められた地面の周囲を回転し、移動しています。この大地のすり鉢の中に、キッチンが位置しています。それは、中央の炎の穴の上の木とスティールの小屋です。中央の炎の穴は、炎の周囲を回転するキャンプ場のキャビンのような、シンプルな箱のような部屋に取り囲まれた、巨大なオープン・スペースです。これは、ある種の質素なキャンプ地なのです。

アラカワ+ギンズが記した、数字の打たれた指示を集めた「使用方法」が、キャンプの中でどのように行動し、何をするべきかを示しています。

それはたとえば、

「1.自らにふさわしい仮構をつくりだすまで、自らの周囲に巧みに配されたのものを狂気のごとく取り去るべし」。

想像してみてください!

立ち上がり、ビールとポテトチップを手放そう。テレビやステレオ、ヴィデオを捨て去ろう。さぁ、動きだすのです!

敬意を込めて、

2002年10月29日 (中田雅章訳)
    a+u 02:12 bol.387



アンドリュー・マックネア
 ニューヨークで活動する建築家で、アムステルダムに事務所を構えるパートナー、ジョアンナ・ポストとともにアーク・アーキテクツを主催している。
彼はまた、コロンビア大学大学院建築・計画・保存学部の客員準教授でもある。
http://www.macnairarchitects.com



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