青森コンプレックス2016

2016-12-21〜2017-03-05
青森県立美術館

青森県立美術館開館10周年にあたり、コレクション展特別企画「青森コンプレックス2016」を開催いたします。青森県は、新しい芸術表現を切り拓いた多くの作家を輩出しています。彼らが創り上げた独創的な作品世界を、広く同時代の動きを視野に入れながら検証すべく、開館前から20年にわたり収集・調査研究を続けてきた「青森県立美術館コレクション」は、国内はもちろん、海外からも注目され、高い評価を得ています。美術館開館以降は、隣接する三内丸山遺跡に着想を得た、白い構造体と土に掘られた壕をイメージした建築デザインによる展示空間で、個性溢れる多彩な創作活動を紹介してきました。2006年の開館にあたり開催した「青森コンプレックス」は、その原点といえるものです。開館10周年を迎えてバージョンアップした「青森コンプレックス2016」では、従来の常設展示エリアから企画展示エリアまで拡大し、「青森の魅力の複合体」をあらためてご紹介します。

棟方志功、奈良美智、成田亨など青森を代表する作家をはじめ、近代以降、新たな時代にふさわしい美を模索した画家たちや、価値が多様化してゆく20世紀後半より、既成の枠組みに囚われないユニークな表現を追求した作家たちの作品、そして版画が盛んな青森ならではの第一級の版画コレクション、さらに県出身コレクターと友情を育んだ人間国宝の代表作など、コレクションの中核をなす傑作群を一挙公開。マルク・シャガールによる、バレエ「アレコ」の舞台背景画3点を展示する大空間「アレコホール」を中心に、街の広がりのように配された大小さまざまな展示室を巡って、一部屋ごとに展開する個性的な展示を心ゆくまでお楽しみください。

また、2011年、開館5周年に開催を予定しながら東日本大震災の影響で中止になった「青木淳×杉戸洋 はっぱとはらっぱ」展のために準備されていた構造物「ぽよよんな小屋」が、少し形を変え美術館のエントランスに出現します。

会期:2016年12月21日(水)-2017年3月5日(日)
休館日:第2・第4月曜日(祝日の場合は翌日)および12月29日(木)-31日(土)
開館時間:9:30-17:00(入館は16:30まで)

展示室C・D 反芸術から汎芸術へ:〈もう一つの〉青森のための連鎖反応

反芸術はダダや未来派にルーツをもち、主に50年代~60年代にかけて世界各地で展開された芸術運動です。既存の社会観の解体を試みる反芸術は、芸術を人の日常や社会全体の中で捉え直すもの、いわば汎芸術を志向するものといえます。

日本における反芸術の走りとしては、身体行為と密接に結びついた関西の「具体美術協会」の活動などが挙げられますが、一般化するのは美術批評家・東野芳明が執筆した1960年「読売アンデパンダン展」出品の工藤哲巳らの作品に対する批評文「ガラクタの反芸術」以降のことです。既存の美術制度との軋轢を抱え込みながらも、ここで一気にブームとなった反芸術を弾みに、「ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ」「ハイレッド・センター」といった芸術活動が次々と生まれます。その先鋭的な活動はやがて70年代、物と人・空間の関係を極限まで突き詰める「もの派」の活動に行き着くことになります。そしてこれらの芸術活動の核には、上述の工藤哲巳や村上善男、斎藤義重など実に多くの青森ゆかりの作家たちが含まれています。

本コーナーでは美術館収蔵の国内外の反芸術~もの派的な動向を示す作品に、時代を同じくして美を見出された縄文の資料(三内丸山遺跡出土)や民藝の手仕事的な作品を加えて展示します。戦後芸術の軌跡を紹介するとともに、反/汎芸術の世界-即ち戦後の「ガラクタの廃墟から根生えた強烈な観念の世界」(東野)と現実を改めてつなぎ、その狭間に見え隠れする〈もう一つの〉青森を連鎖反応的に呼び起こす試みともなるでしょう。

(美術館ホームページより)