常設展 – 反芸術の世紀

2015-01-24〜2015-03-29
滋賀県立近代美術館

出品作品: 《ふち(Blink)》1971-72

20世紀の美術史は、既存の芸術観・価値観に対する反乱の歴史でもありました。常識や権威に果敢に挑戦した反芸術の系譜を紹介します。

芸術に対する伝統的な考え方や、芸術のあり方そのものを解体する「反芸術」運動は、20世紀の美術史の展開と深く関係しています。きっかけをつくったとも言えるのは、パブロ・ピカソです。ピカソは、対象を複数の視点から多面的にとらえ、絵画表面上で再構成するキュビスムの手法に取り組みました。これは、ルネサンス以来続く一点遠近法からの解放をもたらした、美術史における革命でした。ロシアで活躍したカジミール・マレーヴィチも、活動の初期にはキュビスムなどの手法を取り入れて、新しい美術のあり方を模索します。
芸術のあり方そのものに対して、根底からゆさぶりをかけたのが反芸術の思想的・精神的な基盤となったマルセル・デュシャンであり、ダダイズムの活動です。《ヴァリーズ》は、複製技術を用いて自身の作品をいつでもどこでも鑑賞できることを可能にし、美術作品は美術館の中で見るものという固定概念を打ち破りました。島々の周囲の海面を布で覆うクリストの作品も、美術館を飛び出した作品です。ロバート・ラウシェンバーグやアルマンは、芸術は日常生活とは切り離されたもの、という伝統的な考え方を打ち破り、日用品や印刷物といった現実の物体を組み合わせて作品を制作します。

日本では、1960年に篠原有司男や荒川修作らが結成した「ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ」が60年代の反芸術運動の流れをつくります。1963年には高松次郎・赤瀬川原平・中西夏之によって「ハイレッド・センター」が結成され、白衣にマスクをつけて銀座の街を清掃するなど、ハプニング的な運動を多く行いました。また、赤瀬川が個展の案内状として制作した千円札が「偽造千円札」であるとして起訴された「千円札裁判」は時代を象徴する事件となりました。厳格なロジックや概念に基づき作品を制作したのが河原温です。1966年に始まる《TODAY》シリーズは、絵画という形式を用いながら意味を極限まで削ぎ落とし、言語という客観的な手段によって作者の行為の記録を呈示しました。シュウゾウ・アヅチ・ガリバーは、自らの身体そのものをテーマに作品を制作します。

ピカソが用意し、デュシャンが決定的に引き起こした「芸術とは何か」を問いは、20世紀以降の美術史の中で最も大きなテーゼとなり、芸術家の前に立ちはだかったのです。

(美術館ホームページより)