コレクション展「2014-Ⅱ どちらでもない/どちらでもある」

2014-08-02〜2014-09-23
広島市現代美術館

美術作品において、何が、いかにして表され、何を意味するのか、といった表現内容が明確に示されることはしばしば、明確には示されていません。しかし、そのような不明確さは、必ずしも作品の欠点とはならず、優れた作品においては、抽象、具象のどちらともつかないイメージの揺らぎや、パロディや風刺に見られる意味の重なり合い、作者自身の分裂した視点や立場のせめぎ合いといった、複数の観点が高度に統合され、そのダイナミズムが作品の深みを生じさせています。

また、鑑賞するたびに異なる印象を与えるような、あるいは、鑑賞する人物の経験や心情によって変化するような表現の振れ幅が作品をいっそう魅力的なものにさえしています。その不確かさを自覚し、揺らぎや変化を積極的に楽しむことは、鑑賞者自身のペースで作品を体験し、さらに繰り返し鑑賞することのできる、美術鑑賞の醍醐味といえるでしょう。

このような観点から、本展覧会では「不明確さ」が分かりやすく現れている作品を紹介しています。そして、その紹介にあたり、何かしらの結論に至りにくく、それでいて宙づり状態が心地よくさえ感じられる5 つの対立項として「風景/模様」「人/モノ」「重い/軽い」「おぞましい/美しい」「私/なにものか」を設定し、各コーナーのテーマとしています。

「どちらでもない」「どちらでもある」という二者択一が有効に働かない状況を体験していただく本展覧会の試みが、不確かさにとどまり続ける鑑賞体験の豊かさと楽しみを感じていただく機会となり、鑑賞を重ねるたびに味わいと愛着が増していくような、お気に入りとなる作品との出会いにつながれば幸いです。(美術館ホームページより)